6月3日、綾野剛さん主演の超硬派な映画が公開されます。
その名も「武曲(むこく)」、藤沢周さんの純文学を映画化したものです。

見どころは?
もちろん、やさぐれ主人公を見事に演じる綾野剛さんです!

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映画「武曲」とは

公開日

2017年6月3日(土)

出演者

綾野剛  :矢田部剣吾(やたべけんご)
村上虹郎 :羽田融(はだとおる)
前田敦子 :カズノ
柄本明  :光邑雪峯(みつむらせっぽう)
小林薫  :矢田部将造(やたべしょうぞう)
風吹ジュン:大野三津子(おおのみつこ)

監督

熊切和嘉

代表作:私の男 (モスクワ国際映画祭最優秀作品賞、最優秀男優賞)

クラウドファンディング

上映館数を増やすためクラウドファンディングで資金を募集しました。
リターンとしてエンドロールに名前が掲載されるなどの特典が用意されており、
目標金額200万円に対し、635万円以上が集まりました。※4月17日終了


原作「武曲」とは

原作は芥川賞作家藤沢周さんの小説「武曲(むこく)」です。

藤沢周とは

1998年「ブエノスアイレス午前零時」で芥川賞を受賞されました。
幻夢や心中抄、界など著書多数。

重たい雰囲気の文章が得意で、古風な文体を好んで使っているように思います。

純文学だけあって読書に慣れていないと読み進めていくのに時間がかかる作品ばかりですが、
結末に向けて晴れやかで爽やかな印象へと変えていくため、
読了感は清々しいものであることが多いです。

現在は小説家であり、法政大学経済学部で教授もされています。

あらすじ

矢田部研吾は警備員をしながら、高校の剣道部で週に3回剣道を教える生活をしている。

彼には父親を意識不明の重体にしてアルコール中毒になった過去がある。
そして今も、その過去から抜け出せずにいる。

羽田融はラッパ命と自称する高校生だった。
言葉に魅いられ言葉を集め、いつかそれを歌にすると思いながら生きている。
あるとき、とあるトラブルで剣道部に連れられていく。

そしてそこで矢田部と剣道に出会う。

剣道に魅了される二人は、正反対ながらも互いに惹かれ、かかわりを持っていく。

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書評

要するに剣道に魅入られて抜け出せなくなったダメな大人と
良くも悪くもまっすぐ過ぎる高校生の物語です。

矢田部に関して「藁のように弱い」と何度も作中に出てきますが、
まさしくそのとおりで、物語の彼の独白は八割方うじうじしています。
だからこそ、結末がより清々しく感じられるのではないでしょうか。

融はというと、若々しく真っ直ぐで矢田部とはまったくの正反対です。
ところが剣筋が矢田部の父と似ているため、矢田部は融に父親を重ねてしまいます。

まったくの正反対な二人が同じ剣道に魅了され、
互いに無視できない存在になり、そして複雑な感情を以て互いとの立ち合いを望んでいく。

これは矢田部が救われるための物語なのです。

曇天続きの梅雨のただ中にあった物語は、
結末には夏の青空、そして夜空を迎えます。

ここでこれまで暗示的に感じさせられていた「武曲」というタイトルが
やっと明確に北極星と北斗七星として描かれます。
※武曲の原作注【北斗七星の中の二連星】

原作と映画の違い ※ネタバレ注意

映画では羽田融に怪我を負わせたことが
矢田部が再び堕落していくきっかけとなっていますが、
原作では逆に更正のきっかけとなっています。

また映画の羽田融は死に魅入られる危険な感じがしますが、
原作の融は若者らしい危なさはあるものの基本的には素直でまっすぐな好青年です。

映画で前田敦子さんが演じるカズノは、
原作では矢田部の彼女ではなく行きずりの女性です。

矢田部の究極にダメな感じを演出するのなら、
彼女ではなく原作通りの設定の方が説得力があるように思いました。


まとめ

映画の公式サイトで最初にどんと表示される綾野剛さんと村上虹郎の映像ですが、
綾野剛さんのどん底に堕ちたような表情は、主人公の病的な感じがよく表現されています。

剣道の試合というよりは決闘、
立ち合いというよりは果し合い。
そんな硬派で情けなくて、どうしようなく男らしい映画になりそうです。

公開が楽しみですね!

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